社長コラム

社長コラム 2024

第126回(7月2日)『ファイナンスと今後の見通し』

株主の皆様

 今年も梅雨が始まり,各地で線状降水帯が発生するなど,様々な被害が報告されています。被害に遭遇された方には心よりお見舞い申し上げます。

 さて,6月14日の増資発表を行って以来,皆様へ情報発信が出来なかったことにつきまして,以下の通り説明差し上げます。

 過去のファイナンス時にも説明差し上げましたが,株式や新株予約権を発行する際には「企業内容等の開示に関する内閣府令」の定めに基づき,関東財務局長へ有価証券届出書などを提出する義務があります。一方で,そこに記載した内容以外の情報発信を行うと市場に影響を与える可能性が懸念されるため,法務的観点に基づいて,サイレント期間を設けています。そのため第三者割当増資の払込み完了まで私やオンコリスからの発信が叶いませんでした。このような状況をどうぞご理解いただきたく存じます。

 今回の増資は,主に以下の状況が発生したために,やむを得ず実行に至りました。

  1. 2023年7月の第19回新株予約権による資金調達発表時に想定していたテロメライシンの国内販売提携先やトランスポゾン社からの収入の発生時期に遅れが生じました。
  2. また,第19回新株予約権による調達資金は2024年3月に完了しましたが,実際の資金調達額は当初計画の87%ほどに留まりました。

このような理由により,2024年7月から資金調達を開始することになりました。

では,現在の主なパイプラインの状況についてご説明いたします。

 まずテロメライシンですが,日本国内では食道がんに対する承認申請に向けたPMDAとの協議が進められています。特に,今回の臨床試験(101JP試験)の結果に関する臨床的な有用性に関しては,日本の食道がん治療におけるKOL(Key Opinion Leader)の意見をもとに明らかにしながらPMDAとのディスカッションを行っています。製造に関しては,これまで問題とされていた最終製剤の濁りに関して,確かな改善策が見つかり,商用製造に向けた取り組みが行われています。

また,販売提携先の富士フイルム富山化学や三井倉庫とは,承認後のサプライチェーン確立に向けて頻繁な話し合いが行われています。社内の製造販売体制に向けた取り組みも日々進められています。

 一方,アメリカにおけるテロメライシンの開発状況は,MSD社と費用を折半してコーネル大学で準備していた胃がんセカンドラインPhase2試験が,ペムブロリズマブ併用で患者様への投与が開始されています。免疫チェックポイント阻害剤を主とした消化器癌に対する一次治療で効果失敗となる症例は70%以上になると考えられており,今回のセカンドライン試験の結果は大いに期待されています。

 また,神経変性疾患へドラッグリポジションを行っているOBP-601は,ライセンス先のトランスポゾン社の全額費用負担により『PSPでのPhase3開始に向けた準備』や『2023年3月に最終患者へ投与が開始されたALS/FTDのPhase2a試験の投与後48週の解析』が進められています。ライセンス契約に基づく守秘義務により,トランスポゾン社の了承を得ずに当社の独断でこれらの進捗を発表することはできませんが,同社の了承の範囲内で可能な限り速やかに皆様に進捗を報告させて頂く予定です。

 なお,OBP-601の治験に関して,多くの患者様やご家族からお問い合わせを頂いておりますが,いずれも欧米で実施している試験であり,治験参加は容易ではない点をご理解頂ければ幸いです。

2024年も後半に入りました。当社もテロメライシンやOBP-601の開発進展と併せて,製造販売体制を確立させてビジネスモデルの転換を図るため,役職員一同最善の努力を払ってゆくつもりです。どうぞ皆様,引き続き,よろしくお願い申し上げます。

2024年7月2日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第125回(3月18日)『創業20周年を迎えて』

株主の皆様

 いよいよ春らしい陽気となって参りました。来る3月28日の株主総会と事業説明会に向けて,当社は最後の調整を行い,皆様をお迎え出来る事を心待ちにしています。

 さて,本日3月18日はオンコリスバイオファーマの創立記念日となっており,おかげさまで20周年を迎えることができました。また,株式上場からも10年が経過したことになります。これも皆さまからのご支援,ご声援の賜物と御礼申し上げます。

 この20年間,私たちはオンコリスの企業価値を上げるために最大の努力をして参りましたが,その歩みは平坦なものではありませんでした。2008年9月のリーマンショックでは資金が枯渇してベンチャー企業のいわゆる「死の谷」を経験しました。それでもOBP-601の米国BMS社への抗HIV薬としてのライセンスやテロメライシンの中外製薬へのライセンスも成功させることが出来ましたが,いずれも相手会社のポートフォリオ変更による判断によりライセンス契約は終了せざるを得なくなりました。

 現在は,OBP-601は米国Transposon社へのライセンスにより,神経難病治療薬として生まれ変わり,進行性核上性麻痺(PSP)という病気に対して非常に意義深い結果が公表されました。年内にはALS(筋萎縮性側索硬化症)やFTD(前頭側頭型認知症)の結果が出てくる予定です。テロメライシンにおいては,ライセンス契約に依存することなく自力で承認申請まで成し遂げるという決意の下,食道がんPhase 2の結果も臨床的に非常に有用なものであることが確認され,いよいよ年内に商用製造まで進める段階に来ています。

 これから当社は,研究開発中心のベンチャー企業から,製造販売体制を兼ね備えた製薬企業型の企業へと変貌を遂げようとしています。そのための課題はまだありますが,ひとつひとつ解決しながら,当社は更なる成長を遂げてゆきたいと考えています。そのためには,今後も株主の皆様のお力添えが必要であることは言うまでもありません。

 3月28日の株主総会に向け,どうか皆様の議決権を行使していただき,お時間の許すかぎり総会当日には会場に足をお運び頂き,事業説明会までご参加いただけましたら幸いに存じます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

2024年3月18日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第124回(3月7日)『国際アルツハイマー・パーキンソン病学会の発表内容及び議決権行使のお願い』

株主の皆様

 日々寒暖の差が激しく、私は今年に入って2度も風邪をひいてしまいました。皆様はお変わりないでしょうか?

 さて、3月5日からポルトガルのリスボンで第18回国際アルツハイマー・パーキンソン病学会が開催され、OBP-601のPSP(進行性核上性麻痺)に対するPhase 2二重盲検試験の成績がTransposon社、UCSF(カリフォルニア大学)およびBrown大学の共同で発表されます。この結果については、すでに2月14日に報告させていただいた通りです。

 この学会での抄録は、昨年秋ごろが締め切りであったため、投与開始24週間目までの中間成績の結果のみが記載されていますが、今年に入って投与開始48週目までの最終結果が出てきており、実際の発表内容にはその結果が含まれます。

 今回の試験の結果において特筆すべきなのは、各種バイオマーカーが血液で測定されたものではなく、臨床現場では採取の難しい脳脊髄液を採取して測定された結果であるという点で高い評価を受けています。

 この病気で特に重要なのはNfL(ニューロフィラメント軽鎖)というバイオマーカーの変化です。中枢神経が炎症などで破壊されると脳脊髄液中にNfLが溶け出してきます。OBP-601の400㎎投与群ではその上昇が持続的に抑制されました。一方で、プラセボ(偽薬)を24週間投与された症例では脳脊髄液中のNfLが上昇を続けましたが、その後48週までOBP-601の400㎎投与に切り替えると、NfLは低下を示してOBP-601の400㎎を48週間投与継続した症例と同等まで低下させることができました。また、測定値にばらつきは大きいものの、100㎎、200㎎、400㎎およびプラセボ群において、用量依存的な変化が認められました。その結果、OBP-601はPSPの病態を安定化させることができました。

 同様の結果が、脳脊髄液中のIL-6という炎症性サイトカインにおいても得られており、OBP-601はLINE-1を抑制し、炎症性サイトカインを低下させることによって神経炎症を抑制し、その結果、中枢神経損傷を抑制したことになります。

 このように、血液ではなく脳脊髄液中で様々なバイオマーカーを測定して結果を出した医薬品の臨床試験は世界でも稀なことのようです。ただし、この試験はPhase 2であることと、脳脊髄液での測定にばらつきが大きいため、投与群間での有意差検定には重きを置いていません。

 昨年アメリカで許可になったBiogen社の「トフェルセン」という医薬品は、まだ日本では使えませんが、臨床試験では病態の進行を止めることはできませんでしたが、血液中のNfLの上昇を50%程度抑制したという結果が評価されて許可になっています。今後OBP-601はそれと同等以上の効果が出せることが期待されています。さらに、C9orf72関連ALS/FTDのPhase 2に関する最終結果にも期待が集まっています。

 現在当社では、来る3月28日の株主総会に向けて準備を進めています。どうか株主の皆様には、議決権を行使して頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

2024年3月7日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第123回(1月5日)『2024年 年頭所感』

株主の皆様

 2024年 明けましておめでとうございます。今年は新年早々心痛ましいことが続きました。ことに,令和6年能登半島地震で被災されました方々,並びにその御関係の方々には心よりお見舞いを申し上げます。

 2023年は,皆様にお約束した6つの目標に対して,以下のように5つの項目を期間内に達成できました。これは株主皆さまの日頃からのご支援、並びに社員の日頃からのたゆまぬ努力の結果得られたものです。

  1. テロメライシンン食道がんPhase 2のトップライン結果の公表
  2. 国内製造所としての三井倉庫株式会社との契約締結
  3. 信頼性保証本部を基にした国内製造販売体制の整備
  4. アメリカ胃がんPhase 2実施のためのMerck社を交えた共同開発体制の構築
  5. OBP-601進行性核上性麻痺Phase 2a試験中間成績の公表

 一方で,ただ一つ達成できなかった項目が,国内販売会社との契約でした。すでに複数社に絞って契約交渉の最終段階に来ています。契約締結時期に関しては2024年第1四半期を目指しており,皆様にいち早くお伝えできるよう最善を尽くしてまいります。

また,今後のテロメライシン商用製造のための資金調達ですが,昨年末までに70%弱まで新株予約権の行使が完了しています。残りを今年出来る限り早い時期までに完了させる予定です。

 さて,今年の目標ですが,何と言っても「テロメライシンの承認申請」です。そのためにはまず国内臨床試験の詳細な結果をまとめ,ベルギーでの商用製造を開始する必要があります。当然ですが,国内販売会社との契約も行います。

 今年はオンコリス創業20周年にあたります。いまオンコリスは単なる創薬ベンチャー企業から,製造販売が出来る製薬企業へと生まれ変わって行こうとしています。この節目に皆様によい報告が出来るよう,常に最善の努力をしてまいります。今後ともご指導,ご鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます。

2024年1月5日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

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