社長コラム

第130回(6月26日)『先駆け総合評価相談の近況と欧州臨床腫瘍学会での発表内容』

株主の皆様

 蒸し暑い日々が続いていますが,いまオンコリスはもっと熱い情熱をもってテロメライシンの承認申請に向けた「ラストスパート」をかけています。

 既にお知らせの通り,先駆け総合評価への資料提出は,信頼性調査に関するもの以外はすべて提出を完了し,PMDAからの問い合わせ事項に対して日々対応しています。

 さて,前回のブログで書ききれなかった,PMDAのテロメライシンに対する姿勢の変化について書きたいと思います。これは我々にとっても予想が難しいものでした。

 まず昨年1年間,PMDAはテロメライシンの臨床評価に対して非常に厳しい姿勢で臨んできました。その裏には,昨年相次いで先駆け指定を受けた再生医療等製品2品目(A社の遺伝子治療薬とT社の細胞治療薬)が相次いで市販後臨床調査でその有効性が再現されず,承認取り下げや取り消しになったという事例がありました。さらに,S社の細胞治療薬が承認されたにもかかわらず販売が許可されなかった事例も出てきました。これはPMDAにとって,先駆け指定およびその条件付き承認が,結果として正しかったのかどうかが問われることになってしまいました。

 この状況下で,PMDAはテロメライシンにも,「Phase 2の成績は確実なものであるのか?あるいは,市販後にその成績が再現されるかどうか?」に対して非常に厳しい見方をしてきました。そのためにPMDAは,テロメライシンのこれまでの資料評価よりも,市販後の全例調査ではなく,「市販後臨床試験の試験計画」を先に評価するという,承認申請前の段階としては異例の姿勢を示してきました。

 この状況に対応するために,当社はテロメライシンの臨床試験研究会の医師にも同席頂いてPMDAとの面談を行い,『食道がん局所治療の世界でテロメライシンはほかに例のない医薬品となりうること,手術も抗がん剤治療もできない高齢者を中心とした患者に対して放射線療法と併用できる唯一の救いになれること』,などを主張して頂き,ようやくPMDAも評価を前向きに進めようという姿勢になってきました。

 更に,非常に重要な情報が国立がん研究センターから報告されてきました。それは,「テロメライシンのPhase 2を実施した施設で,過去10年にさかのぼって,食道がんに放射線治療だけを行った症例のデータを集めて,実際にその有効性を内視鏡で判定した結果は,『治療開始6か月で22%が局所完全治癒(L-CR)であった』」というものです。このような食道がんに放射線治療だけを行った局所奏効率の臨床データは、これまで世界の何処からも報告がありませんでした。この結果は,来月スペインのバルセロナで行われる欧州臨床腫瘍学会で発表される予定になっています。

 皆様にはすでにご報告の通り,当社が実施した日本での多施設臨床試験(Phase 2)ではL-CR率が41.7%という成績が得られており,この結果によってテロメライシンは食道がんに対して十分な効果を示したことが統計学的にも強く示唆されるに至ったわけです。

 このような経緯を経て,PMDAはテロメライシンの臨床効果に対してポジティブな印象を持つに至り,臨床評価はすでに峠を越え,現在承認申請に向けて非臨床,品質などを含めた詳細な評価検討を行っています。

 当社はPMDAとの対話を積極的に進め,年内の承認申請を達成するために最大の努力を行い,全社員がラストスパートをかけています。そして,テロメライシンが食道がん治療の新たな選択肢になり,患者様や医療現場に大きく貢献できるよう全力を尽くして参ります。

2025年6月26日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生