社長コラム

社長コラム 2020

第93回(9月28日)『アデノウイルスを用いたコロナワクチン』

秋分も過ぎ,急に涼しくなってまいりましたが,如何お過ごしでしょうか?

さて,先週,当社が出資しているPrecision Virologics(PV)社に関連して,『米国セントルイスのワシントン大学とインドのBharat Biotech社が,新型コロナウイルス用ワクチンに関する日米欧を除く地域のライセンス契約を締結した。』というニュースが届きました。PV社はワシントン大学発のバイオ企業で,このワクチン開発に関与しています。

このワクチンは,チンパンジーに特有なアデノウイルスをベースにしており,新型コロナウイルスに対する薬効薬理試験の結果は,既にCell誌に掲載されています。このワクチンの特長は,注射ではなく経鼻投与が可能で,冷蔵でも安定して保存ができる点です。

本ライセンス契約が,現時点で当社出資先のPV社の業績に直接の影響を与えるものではありませんが,熾烈な競争をくりひろげている新型コロナワクチン開発の新しい展開となるよう,大いに期待したいところです。

どうぞ,皆様におかれましてもご自愛頂きますよう。

2020年9月28日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第92回(9月18日)『Unleash社の減損処理と第三世代ウイルス開発の新体制』

9月に入り少しずつ蒸し暑さも和らいでまいりましたが,依然として新型コロナウイルスは世界各国で再拡大が発生し,世界経済には大きな爪痕を残しています。当社も新型コロナ治療薬の開発を急いでいますが,株主の皆様におかれましては,引き続き感染リスクに十分ご配慮いただきたく存じます。

さてこの度,プレスリリース致しました通り,大変残念ではありますが,当社が保有する米国Unleash Immuno Oncolytics社(アンリーシュ社)の転換社債等を全額減損損失として計上することと致しました。

アンリーシュ社は,アデノウイルスの遺伝子改変に関する世界的権威である米国ワシントン大学教授 David Curiel 博士の研究成果をもとに2015年に設立されたバイオ企業で,これまで不可能と考えられてきたアデノウイルスの全身投与を可能にし,さらに直接的かつ特異的にがん免疫を刺激することができる遺伝子を導入したウイルスを開発する技術を持っています。当社はこの点に目を付け,2018年2月にアンリーシュ社へ投資をしてまいりましたが,第3世代のウイルスとして期待している新規ウイルスの遺伝子構築は進捗してはいるものの,独自での資金調達やライセンスなどの事業計画が遅延してしまいました。

以前(2018年9月)のコラムにも問題提起しましたが,当社の主軸である「腫瘍溶解ウイルス」は局所のがんを治療して「がんを切らずに治す」ことを目指してきましたが,世界の趨勢は局所の治療も重要だが,全身の転移がんも治療できるような腫瘍溶解ウイルスは可能なのか?という問いかけが学会のみならず大手製薬企業の間にも盛んに議論されるようになりました。

その結果,いくつもの全身投与可能な腫瘍溶解ウイルスが開発され,2016年には米国ブリストル・マイヤーズ・スクイーブ製薬(BMS)が総額936百万ドルでサイオキサス社のウイルスをライセンスし,米国メルク社は2018年に総額394百万ドルで,全身投与可能なコクサッキーウイルスを開発している豪州ビラルティックス社を買収するなど,この業界にも大きな変化が現れてきました。

当社は,全身投与が可能で,がん細胞に特異的に感染し,その後直接かつ特異的にがん免疫を刺激できるようなウイルス開発を断念したのではなく,今後も第3世代の腫瘍溶解ウイルスの完成を目指してゆきます。 特に,今年4月に米国カリフォルニア州に開設した当社100%子会社OPA Therapeutics Inc. 社長に任命したFrank Tufaro博士(元DNAtrix社 CEO)は腫瘍溶解ウイルス開発のパイオニアでもあり,彼を取締役としてアンリーシュ社に派遣し,より強力なガバナンス体制を敷き,資金調達を完了させ,早期に新世代の腫瘍溶解ウイルスの完成を目指して参ります。

どうぞ,皆様におかれましてもご自愛頂きますよう。

2020年9月18日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第91回(8月12日)『テロメライシンの開発状況』

今年の梅雨明けは例年より遅く,そのあとは全国的に猛暑が続いており,特に先般の広範囲の豪雨による大規模土砂災害の被害者の皆様には,新型コロナウイルス拡大の影響も大きく,深くお見舞い申し上げます。

さて,先日2020年度上半期の決算報告とともに発表しました通り,コーネル大学との頭頸部がんに対するPhase 2試験が,ようやくスタートします。いまだ新型コロナウイルスの拡大が続いているアメリカ合衆国でありますが,担当医の臨床研究に対する意欲は強く,新たながん種に対するチャレンジが始まります。

ここで,”がんのウイルス療法 テロメライシン”の開発状況(下図)を,簡単に報告させて頂きます。

まず,日本国内では「先駆け審査指定」に基づき,中外製薬がテロメライシンと放射線治療を併用した食道がんPhase2を実施しています。現時点で,中外製薬は2022年に承認申請を行う計画に変更はありません。また,中外製薬はこれ以外に,テロメライシンと放射線・化学療法の3つの治療を併用した食道がんPhase 1を国内で実施すべく準備を開始しています。一方弊社では,国立がんセンター東病院で,抗PD-1抗体ペンブロリズマブ(商品名:キートルーダ)とテロメライシンを併用した食道がんPhase 1も進行しています。

食道がん以外では,既にPhase1が完了した肝細胞がんの日本国内での展開について,弊社と中外製薬で実施計画を検討しています。

米国では,FDAから「オーファンドラッグ指定」されたことに基づき,米国の食道がん標準療法の放射線・化学療法にテロメライシンを上乗せしたPhase 1を弊社とNRGグループが進めていきます。米国のがん治療ガイドラインを作成するNRGグループと組むことで,テロメライシンが米国での食道がん治療の第一選択薬の一つになることを期待しています。また,FDAからは優先審査されるなど多くのメリットがあります。また,抗PD-1抗体を併用した胃がんPhase 2や,この度コーネル大学と契約を締結した放射線と抗PD-1抗体を併用した頭頸部がんPhase 2など,テロメライシンの他のがん種への展開も進めています。

残念ながら,国内外いずれの試験も,新型コロナウイルスの拡大で,臨床試験への症例組み入れが遅れていますが,何とか遅れを取り戻せるよう努力してまいります。

更に,第二世代テロメライシンOBP-702の開発も徐々に進み始め,来年度に前臨床試験とGMP製造を完了させ,治験申請を行いたいと考えています。

今後も弊社は「がんを切らずに治す」を実現するために,テロメライシンや第二世代のOBP-702の価値向上に努め,早期の上市に向けた活動を積極的に進めていきます。

引き続きコロナ自粛と共に暑さ厳しい日々が続きますので,株主の皆様におかれましてはくれぐれもご自愛ください。

2020年8月12日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第90回(6月23日)『新型コロナ治療薬開発への新たな挑戦』

がんと重症感染症の新しい治療法を開発するオンコリスに,新しい挑戦をすべき時がやって参りました。この度,弊社と長い間共同研究を続けてきた鹿児島大学のヒトレトロウイルス学共同研究センター(馬場昌範教授)から新型コロナウイルスの治療薬に関する特許の譲渡を受けることになりました。

新型コロナウイルスの治療に対しては,すでに世界で数多くの企業や研究グループがワクチンの製造に向けて開発が進んでいます。また,レムデシビル(ギリアド製薬)等ほかの感染症などの治療薬が代替的に新型コロナウイルス治療に用いられるようになってきました。しかし,その治療効果は十分なものではなく,更に,依然として国内外では感染拡大が継続しており,第二波,第三波が懸念されており,新型コロナウイルスに特異的でかつ強力な新薬が強く求められています。

新型コロナウイルスの全世界への拡散は,予想よりも非常に速い速度で,かつ人類の健康と経済活動に極めて強い影響を及ぼしていることはご承知の通りです。新型コロナウイルスがこの世界から駆逐されるのには,まだ相当の時間がかかるというのが専門家の考えであり,私たちの生活がまた元通りになるには,ワクチン開発の成功はもちろんのこと,新型コロナウイルスに特異的な新規治療薬が必要不可欠であることは,エイズ治療の歴史を見れば明らかなことです。エイズウイルスは1980年頃に発見されましたが,いまだに承認されたHIVワクチンはなく,結果的に複数の治療薬を毎日服用することによって,感染拡大がある程度抑えられています。

すでに私たちは,承認済みの治療薬レムデシビル(注射剤)よりも活性が同等以上の化合物を同定していますが,今後も鹿児島大学と共同研究体制を組み,さらに活性が高く,通院しなくても摂取できる経口投与が可能で安全に使える化合物を創製して,いち早く臨床現場に届けることができるよう,努力してゆきたいと思います。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第89回(6月18日)『OBP-601の再ライセンス契約と新たな適応症での可能性』

この度,弊社はアメリカのトランスポゾン・セラピューティックス社とライセンス契約を締結し,OBP-601のこれまでに報告がなかった,全く新しい作用で神経難病の適応を狙うことになりました。

OBP-601は,2006年に当社がアメリカのYALE大学から特許実施権をライセンス導入することに成功し,2010年12月にはアメリカ製薬大手のブリストルマイヤーズ社(BMS)にライセンス導出が出来ました。しかし,2014年になり,BMSは開発資源を現在のオプジーボに集中するという決断をして,HIV薬の開発を中止することになり,当社との契約も打ち切られました。その後,新たなライセンス先を探索してきましたが,すでにHIV治療薬のマーケットは飽和状態となり,なかなか新たな導出先は決まりませんでした。

何故HIV治療薬がALSや神経難病に効く可能性があるのか?これは,今回のお話があったとき,なるほど,こんな使い方があるのかと目が覚める思いでした。

神経細胞のゲノムの40%以上を占めるレトロトランスポゾンという遺伝子は,「寄生する遺伝子」とも呼ばれ,細胞ストレスなどの引き金によって,レトロトランスポゾン遺伝子がゲノムのいろいろな箇所に増幅され複製されて散らばります。これが引き金となって,主にインターフェロンなどが刺激されて産生され,神経細胞を傷つけると言われています。これが,ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因となり,アルツハイマー病ではアミロイドたんぱく(Aβ)の沈着の原因となっていると報告されています。 OBP-601はこのレトロトランスポゾンの逆転写を抑制し,さらに,OBP-601は脳内移行性が非常に優れていて,神経疾患治療にはとても好都合な化合物だということも確認されました。

トランスポゾン社はアメリカの有名なベンチャーキャピタルが中心となって昨年末に設立したバイオ企業で,ロードアイランド州にあるブラウン大学のレトロトランスポゾンに関する発明をもとに神経難病を対象として研究開発を進めています。この発明にOBP-601が最もふさわしい化合物としてヒットしました。

ALSはご存知のようにルーゲーリック病とも呼ばれ,近年ではイギリスの物理学者ホーキング博士も,長年この病気と闘ってきました。まだこの病気を止める有力な治療法はなく,世界の製薬・バイオ企業が開発に乗り出しています。今後,トランスポゾン社はアメリカでの治験を進め,これまでにないメカニズムを持った神経難病に対する治療法を確立してゆきます。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第88回(6月9日)『ハンルイ社との契約解消』

この度,弊社は中国Hengrui製薬(ハンルイ社)とのテロメライシンに関する中国・香港・マカオに対するライセンス契約を,両社合意の下で打ち切ることになりました。

これまでハンルイ社では,独自でのテロメライシンGMP製造を行い,臨床試験開始に向けて中国政府との事前相談を行ってまいりました。しかしながら,2016年11月の契約締結からすでに4年近くが経過し,昨年10月の中国政府への事前相談以来,中国国内のコロナウイルス拡大の影響もあり,政府からの回答も出ることなく時間が経過しました。契約時に予測した臨床試験入りが2年も遅れることとなり,当社としても中国ビジネスを考えるうえで,非常に危惧すべき状況と考えてきました。

この度,ハンルイ社との協議により,このまま中国でのテロメライシンの開発を継続することは双方にとってメリットは薄いと判断し,この度の契約終了に合意することとしました。

少なくとも,テロメライシンの有効性や安全性に疑義が示されたのもではなく,また製造上のトラブルが発生したということでもありません。あくまで双方のビジネス上の選択であったと理解して頂きたいと思います。

弊社は,今後中国・香港・マカオでの新たなライセンス先を探索し,早期の契約締結を目指してまいります。

また,弊社が実施しているアメリカや国立がん研究センター東病院での臨床試験は問題なく継続されます。中外製薬では引き続きテロメライシンの放射線併用Phase 2臨床試験を積極的に推進しており,さらに,テロメライシン,化学療法及び放射線療法の3種を併用した食道がん臨床試験を,新たに開始する予定であることを報告させていただきます。

コロナ禍による緊急事態は解除されましたが,まだまだ予断を許さない状況が続いております。
どうぞ皆様ご自愛ください。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第87回(6月4日)『米FDAよりテロメライシンのオーファンドラッグ指定』

この度,アメリカFDAより,テロメライシンの食道がんに対する治療法に対して「オーファンドラッグ指定」を受けることが出来ました。私やテロメライシンの生みの親,岡山大学の藤原教授の長年の夢のひとつがようやくかなったということです。

「オーファン」というのは日本語では「みなしご」という意味で,患者数が少なく,かつよい治療法のない疾患を意味するものです。アメリカの基準では20万人以下の病気を意味します。アメリカの食道がんは患者数がおよそ1.7万人(2018年)ですが,治療法は古くからの化学療法と放射線,あるいは手術しかありません。テロメライシンはこのニッチな市場に対して,鋭いエッジを効かせることが出来る可能性が高くなったということです。

今後テロメライシンは,FDAから食道がん開発に対する優先的なアドバイスを得ることができるようになり,また販売後には7年間のマーケット独占権も与えられることになりました。

今後,アメリカでは放射線化学療法併用の食道がん臨床試験も開始される見込みです。また,チェックポイント阻害剤との併用による臨床試験もひかえており,テロメライシンの食道がんに対するマーケットの立ち位置がより明確になってゆくことになると思います。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第86回(3月30日)『第16回定時株主総会を終えて』

去る3月26日,東京都下の新型コロナウイルス感染も止まらぬ中,ご参加いただきました株主の皆様にはマスク着用をお願いし,おかげさまを持ちまして,弊社第16回定時株主総会を無事終えることが出来ましたことを報告させていただきます。
これまでのご厚情にたいしまして,感謝の念に堪えません。

今回の総会では,決議事項はなく,決算報告のみということになりました。昨年度は中外製薬(株)とのライセンス提携などがあり,売上高は起業以来最大の13億円を超える金額となりました。しかしながら,研究開発費などがかさみ,黒字化には至りませんでした。

株主総会後には直ちに事業説明会を行いました。その詳細なプレゼン内容に関しましては弊社のWebにて4月半ばに動画配信させて頂きます。 ご臨席の株主様からは数多くのご意見やご質問を頂き,弊社事業へのただならぬご関心の高さと厳しい目線を感じ取ることが出来ました。その中でも,最も皆様からのご関心が高かったことは,テロメライシンのライセンス契約の内容に関するものでした。本件に関しましては中外製薬(株)との間での契約により詳細をお話しできないことになっており,心苦しい限りではあります。

一方で,大変辛らつなお声も頂きました。「もっと名のある若手の研究者を引っ張ってきて,業績に結び付けるべきだ」あるいは「もっと小児がんにも目を向けるべきだ」というご意見で,私も強くインパクトを受けました。更に,「オンコリスの創薬で,がん撲滅をねらうのか?」とのご質問を頂きましたが,私の未来のがん治療に対する考え方である「がんを無理やり消滅させるようなやり方よりも,がんと共存しながら,がんで死ぬことがないような治療を実現したい」という思いを述べさせてもらいました。

弊社は,いよいよ起業17年目に入ってまいりました。今後も企業価値向上に向けて最善を尽くしてゆきたいと思います。 新型コロナウイルス感染拡大の影響により,進行している臨床試験が遅延するなどの影響が出始めておりますが,そんなネガティブインパクトを跳ね返して頑張ってまいります。

今後ともご支援いただきますよう,宜しくお願い致します。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第85回(3月5日)『コロナウイルス「感染」とは』

全世界に新型コロナウイルスの感染が広がり,政治・経済に混迷の深まる中,この度,中外製薬によるテロメライシンの食道がん放射線併用のPhase 2が開始されました。
ようやく,というか,確実に中外製薬の臨床開発のメンバーの方々のご努力によって,国内多施設での食道がんのウイルス療法達成に向けた試験が始まったわけです。これから着実に試験計画書通りの的確な症例が組み入れられてゆき,より良い結果が導き出されるよう,弊社も努力してゆきたいと思います。

さて,コロナウイルスに関してですが,どうもその報道の在り方が,我々ウイルスを扱っている会社からすると合点がいかないところが多く感じられます。まず「感染した」といういい方ですが,これは一体何を意味しているのでしょうか?
そもそも「ウイルスが生きている・死んでいる」などという表現がまかり通っていますが,ウイルスは生き物ではありません。ウイルスは感染した後,その細胞の力を借りて増殖するわけで,それ自体がばい菌(バクテリア)のように生きているわけではないのです。「遺伝子(DNAまたはRNA)が入っている小さな殻(または顆粒)」であって,自ら生命活動をしているものではありません。

ウイルスが何故悪いかというと
「①感染」→「②細胞内で増殖」→「③細胞破壊」→「④炎症・免疫異常」→「⑤発症」→「⑥悪化または回復」
このような経過をたどります。
どうもニュースを聞いていると「本日〇〇人が感染」というように言っていますが,これは実は上に示した「⑤発症」とほぼ同じ意味で使われているようです。実際に症状が出た人についてのみPCRという検査をしているのが現状なので,上に示した「①感染」した人の数字は実際には「わからない」のです。「①感染」しても何の症状も示さない人が実は数多くいる可能性が高いのです。その理由は,「十分な免疫が働いた」とか「ウイルスの受容体が少ない」などの理由が考えられます。

韓国や中国ではPCRを検査受託できる許容量が大きいために,まだ「⑤発症」する前からの検査も数多く行われているようで,まだ症状も出ていない人も数多くPCR検査を受けているわけです。つまり,PCR検査を受けた人の母集団が日本に比べて大きく,検査対象のステージも異なるのです。なので,日本に比べて中国はもちろんのこと,韓国も多数の「感染者」が出ていると報道されているわけです。日本でも「もっとPCRを」という声が広まっていますが,恐らく検査をすればするほど,無症状を含めた「感染者」が増えてくると考えられます。

これはあくまで私見ですが,今回のコロナウイルスは,インフルエンザと同様に非常に感染・伝播力が強く,合併症や持病のある方に対しては非常に厳しい症状を引き起こすウイルスであり,これまで私たちが対処してきたインフルエンザと同じカテゴリーに入る新たなパンデミックの原因となるウイルスであると言えます。なので,コロナだけを特別扱いして過剰に恐れるのではなく,これまで私たちが経験してきたインフルエンザと同じように警戒し対処してゆくのが重要と考えます。

弊社は株主総会を今月26日(午前10時,グランドアーク半蔵門)に控えており,社員一同最後の準備に集中しております。
どうか皆様もご健康には十分ご留意されますよう,こころよりお祈り申し上げます。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第84回(1月9日)『2020年 年頭所感』

新年あけましておめでとうございます。
2020年は56年ぶりに開催される日本でのオリンピックの年ということで,希望に満ちた年明けとなりました。しかし,新年早々アメリカとイランの情勢が不安定となり,原油高,円高と相まって日本の株価も大きな影響を受けています。

そのような情勢の中で,当社は引き続き中外製薬とのテロメライシンのライセンス契約のもと,国内での臨床試験を積極的にサポートしてゆきたいと思います。また,世界に冠たるアデノウイルスプラットホームを形成するため,第2世代のテロメライシンOBP-702の開発に精力を傾けてゆきたいと思います。

がんのウイルス療法が,日本の医学界に認められるようになるにはまだ少し時間がかかるものと思われますが,より良いがんのウイルス療法を更に発展させるべく,これからも最大の努力をしてゆきたいと思います。
どうか皆様の変わらぬご支援を賜りますよう,本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生